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ブナ日記

ブナの木が大好き!ブウブウ文句も言ってます、てなことで ブログではブナと名のってます。カメキチのつれです。これは 私的備忘録です。

看護学校~樹ちゃんのこと

姉が定時制高校だったのに わたしはのうのうと高校へ行かせてもらったから

大学進学したいなんて とても言えなかった

 

皆が 受験勉強に身を入れる進学クラスにいる自分は 浮いた存在だった

そうかといって 就職にも 前向きになれない

 

そんな折 学校で 看護学校の学校説明会があった

 

これが 運命の出会い

何しろ 授業料、寮費とも、卒業後1年の〝お礼奉公″をすればタダという

必要なのは 月のこづかいで良い! ほんまに?

これなら、親に負担をかけずに 勉強ができるなと思った

 

看護婦=ナイチンゲール ほどの知識しかない 当時のわたし

その少し前 父の戦争時に受けた傷が化膿し、手術した時に実際の看護婦さんに出会っただけで 高邁な理想に燃えるなんて…とんでもない

ただただ、勉強ができるということが魅力だった

 

それが2学期の後半

受験目指して 図書館で自主勉強に励んだ

 

(当時 夕刊配達のアルバイトをしていた 

帰りが遅くなると 時々妹たちにも手伝わせた

いまだにそのことで文句言われる

月1000円のアルバイト料のうち、「ちゃんと あげていたやろ?」

というと それはそうやけど…と 思い出してくれた

ほらね、文句ないやろ!)

 

大学のすべり止めで受験する人も多かったのか 受験会場は思いのほか多く

面接という人生初経験に舞い上がり 

受験会場を後にする頃には もうダメや…本気で就職先を考えねばと思った程落ち込んでいたけどセーフ!

 

同期生は23名(うち富山から1名、石川から2名)

全寮制、入学後半年は上級生2名と新入生2名の同室、戴帽式の後は同級生4人の集団生活

寮母さんがいて 煎茶なども教えていただいた

 

初めて 親元を離れるから 心細いこともあったが

毎日が新鮮

今となっては 懐かしさだけが残る

 

昔の看護学生の生活は 

つれあいの商船高専のような起床ラッパはないけれど

集団生活の規律は そこそこ あった 

 

廊下一つで 寮から 学校と 病院へ行けた

寝坊も、仮病も通用するわけもない

 

1学期は一般教養が主な授業 

夏休み後に 戴帽式がある

(初めての病院実習に臨む直前に、教員が、学生一人一人にナースキャップを与え、看護師を目指すものとしての職業に対する意識を高め、またその責任の重さを自覚させるための儀式)

 

グノーのアベ・マリアの曲が流れる中

ナースキャップを 教務主任のK先生から頭につけていただき、

手にローソクを持ち 

ナイチンゲール誓詞をみんなで唱和する

いよいよ始まる病院実習に胸が高鳴ったのを 

今でもはっきりと覚えている

 

今では ナースキャップは院内感染のもととして つけないのが一般的な傾向だから

戴帽式もないのだろう

ちょっと寂しいな

 

1年生の実習といっても 実際 手も足も出ない

たいてい同じ病棟、外来には先輩の学生もいて

同じ患者さんを受け持つことも多かった

患者さんの話を聞き 身体の清拭をする

実習があると 実習記録に追われる

受け持ち患者さんの病気について調べ

看護計画を 立てたり… 

あっという間に時間に追われ、消灯時間となる

 

放課後は 遊びに出ることなど考えもしなかった

真面目だからではない

みんな そうだった

それが 当たり前だったから

 

小児科病棟の実習で受け持った 樹ちゃんは 

わたしにとって忘れられない患者さん

 

急性白血病で入院していた樹ちゃん

受け持ちとは言え できることは 一緒に遊ぶこと

お絵かきが大好きな低学年の男の子 

当時のキャラクター パーマン?をよく描いていた

 

彼から もらった一枚を 今も 看護師免許とともに大事に取ってある

 

4週間の実習後も 時々 病室を訪ねていた

 

ある日の放課後 訪室したら

樹ちゃんの様態が 急変し 医師と 看護師に囲まれていた

 

「蘇生器!持って来て!」の声に

慌てて詰所へ

周産期病棟に貸し出しているといわれ また 走った

古い木造の廊下を つっかえ、つっかえしながら

重い蘇生器を 引きずって走った

泣きたくなるほど気持ちはせくのに さっさと進めず

ものすごく長~い距離だった 

 

心臓マッサージしている医師に届けた後

そっと 部屋の隅で 樹ちゃんの最後に立ち会った

 

泣き崩れるご両親

 

患者さんの前では泣くなと 教えられていた

状況をわかるはずもない 無邪気な弟を連れ 屋上へ行った

 

弟の手を握りながら、思いっきり泣いた

 

中庭に車を入れて 樹ちゃんは ベランダから自宅へ帰った

ちょうどその時 夕焼けの光がさしてあたりを真っ赤に染めたのが

目に焼き付いた

 

『いい看護が できるようになりたい』

その時 そう思った

 f:id:buunanome:20150903143401j:plain 戴帽式の後

昔は 純情可憐で 本気だったんだけどね

 

あんまり 良い看護婦にはなれんかったな…